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2012/06/09

我が国のがん検診はガラパゴス化している

我が国のがん検診受診率は先進国の中では最下位がキーワードになっているので、調べてみた。確かに、ものの見事に最下位であり、その差に致命的なものさえ感じるほどである。全国健康関係主管課長会議にがん対策推進室から出されている資料は、次の乳がん検診と子宮頸がん検診だが、我が国が先んじている胃がん検診や肺がん検診はどうなっているかと調べると、
胃がん検診は諸外国(アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、カナダ、オランダ、フィンランド)においては実施されておらず、我が国独自のものである(平成18年1月現在)
市町村事業における肺がん検診の見直しについてに次の記載がある。
諸外国(アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、カナダ、オランダ、フィンランド)での実施状況を調査したところ、これらの国では肺がん検診は実施されていなかった(平成18年5月現在)
と 諸外国では検診そのものを実施していなかった。

なぜ、乳がんと子宮頸がん検診の受診率が日本だけが異様に低いのか?


アジア系の韓国からも大きく引き離されていることを考えると、日本人という特性によるものと解釈するよりも、対策型検診の手法に相違があると考えた方が分かりやすい。

しっかりとしたレポートがほしいところだが、どうも、諸外国はかかりつけ医による定期的な健康チェックの一貫で行われている施設検診のようである。一方、我が国は検診車によるものが主流で、定められた日時と場所に集合して受診する集団検診方式。どうも対策型検診の手法論による違いがこの受診率の差に現れているように思える。

厚生労働省も、かかりつけ医によるがん検診を推進するためか、かかりつけ医ハンドブックを作成しているのも、日本における乳がんと子宮頸がん検診の受診率の低さのひとつの要素ととらえていると思える。

つまり、検診受診率が低いのは、受診する国民側だけの問題ではなく、実施する側にも課題があるように思えてならない。

なぜ、日本だけが胃がんと肺がん検診をしているのか?


しかも、胃がん検診は50年以上の歴史があり、老人保健法で取り入れられた肺がん検診も20年以上の歴史があるにも関わらず、諸外国は未だに導入せず、我が国のみが検診を継続している。

国立がん研究センターがん予防・検診研究センターのがん検診ガイドライン推奨のまとめでは、科学的根拠に基づきBランクであるも『死亡率減少効果を示す相応な証拠があるので、実施することを勧める』として、胃がん検診および肺がん検診は、対策型検診として推奨している。

諸外国が胃がん検診をやらない理由は分からないが、そもそも胃がんの発生率が低いからなのか、X線装置と読影技術などの基盤が脆弱なのか、なんらかの理由があろうと思われる。肺がん検診についてもタバコ対策による一次予防を重視しているのかもしれない。

外国は外国、日本は日本。がん検診受診率が低いと実態を把握せず率のみを喧伝する手法に感心しないのと同様に、科学的根拠に基づき推奨されている検診なのだから、がん検診の欠点について理解を得ながら粛々と普及啓発を行なっていくのが王道だろう。


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