まず、がん検診については、がん対策推進計画に沿った取組を行っていくことが重要である。 具体的には、これまでの受診率向上施策の効果を検証した上で、検診受診の手続きの簡略化、効果的な受診勧奨方法の開発、職域のがん検診との連携など、より効率的・効果的ながん検診を検討する。 なお、普及啓発活動に取り組む際には、がん検診の意義、がんの死亡率を下げるため政策として行う対策型検診と人間ドックなどの任意型検診との違いや、
がん検診で必ずがんを見つけられるとは限らないこと、がんがなくてもがん検診の結果が「陽性」となる場合があること、がん検診やその後の精密検査を受けることによって身体的(検査による合併症等)・精神的(苦痛、心配等)・社会的(費用、時間等)な負担が生じ得ること、また、その人の寿命を縮めるとは限らないがんを診断・治療する可能性(いわゆる過剰診断・過剰治療)があることなど、
がん検診の欠点やがん検診に伴う不利益についても理解を得られるようにすることも必要である。
『することも必要である』と結ぶことによって印象は弱くなっているものの、その内容は、
がん検診の普及啓発のために、検診で早期発見しがんが完治した人がよく紹介されるのを覚めた目で見ていたが、厚労省の審議会資料に参考として、このようにあからさまに書かれると、ふと大丈夫かなと心配までしてしまう。
- がん検診で必ずがんを見つけられるとは限らない
- がんがなくてもがん検診の結果が「陽性」となる場合がある
- がん検診やその後の精密検査を受けることによって検査による合併症等が生じることがある
- がん検診やその後の精密検査を受けることによって苦痛や心配等で悩むことがある
- がん検診やその後の精密検査を受けることによって費用や時間等の負担が生じ得る
- その人の寿命を縮めるとは限らないがんを診断・治療する可能性(いわゆる過剰診断・過剰治療)がある
がん検診の普及啓発のために、検診で早期発見しがんが完治した人がよく紹介されるのを覚めた目で見ていたが、厚労省の審議会資料に参考として、このようにあからさまに書かれると、ふと大丈夫かなと心配までしてしまう。
そもそも、文脈そのものは、
国が施策として行う対策型検診は人間ドックなどの任意型検診と違うので、がん検診の欠点や不利益について理解を得られるようにすることも必要である
であり、その欠点や不利益の内容を具体的に記載しただけであるが、参考資料としてこのまま消えるのかと思っていたら、平成24年6月8日に報道された新『がん対策推進基本計画』では、
がん検診の意義、がんの死亡率を下げるため政策として行う対策型検診と人間ドックなどの任意型検診との違いや、がん検診で必ずがんを見つけられるけではないことやがんがなくてもがん検診の結果が「陽性」となる場合もあるなどがん検診の欠点についても理解を得られるよう普及啓発活動を進める。と、がん検診の不利益箇所が『など』にカットされるも、文脈が生き残り、閣議決定されることになった。
がん検診の欠点と不利益を普及啓発する必要性
医師の胃がん検診受診率は一般集団よりも低いのではないかというアンケート結果がm3に出ている。
年齢分布が同じかどうかも不明の単なるアンケート結果として見てほしいが、非医師集団599名の胃X線検査受診率22%、内視鏡受診率19%の計41%に比べて、医師集団1081名の胃X線受診率14%、内視鏡受診率20%の計34%。
もし、医師集団の方が有意に検診受診率が低いとしたら、がん検診の不利益さを普及啓発する必要性があるとも言える。
事実、私の父親の話になるが、一ヶ月後に世界一周クルージングに夫婦で行くことになっていたが、かかりつけ医の薦めもあり、CTによる肺がん検査を受けた。年齢は68歳。異常陰影があり築地のがんセンターを受診することになり、クルージングはキャンセル。早期肺癌であるも切除不能のため放射線療法と化学療法を受けるも本人は納得できず、四国がんセンターに転院し切除を懇願しつつ、10か月で永眠した。
もし、父親が肺がん検診を受けていなかったら、夫婦揃っての世界一周クルージングを満喫していた。これが、早期発見すればがんは治るという普及啓発の弊害としたら、悔やまれてならない。
がん検診の誤解
いろいろな人と会話していてがんに関することで気になることがある。
- がんは早期に発見すれば必ず治る(がんの種類によっては早期でも不可)
- 毎年がん検診を受けていれば安心だ(それでも駄目なことがある)
- タバコを吸っていないのに肺がんになった。受動喫煙でなったに違いない(肺がんの種類によってはタバコとは無関係のものがある)
がんの予防啓発や検診の受診率を上げることは施策的にも大変重要なことであるが、啓発活動そのものにより一定の誤解を与えているとしたら、行き過ぎた点が無かったか医療関係者として反省しなければならない。
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