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2015/05/31

2015/5/31(日) 医療の確保と避難者のサポート策を講ずる

今日は噴火二日目の日曜日

避難所三箇所


鹿児島日赤こころのチーム10名弱が既に入っているが明日月曜日に帰るとのことなので、明日の15時、町と保健所への引き継ぎを依頼

心窩部が痛いという体調不良者がいることを確認。久保先生はこころのケアという位置づけで巡回しているとのこと、町立診療所の堂嶽先生と三宅先生は明日から交互に健康相談に入るとのこと

被災ということで避難所に対して支援が入っていることから、それをサポートする町の保健師ニーズへの保健所からの支援が取り急ぎ必要と判断

徳洲会病院『口永良部避難者特設外来』


口永良部診療所は休診状態になっているが屋久島の医療機能は100%問題無い。つまり1万4千人の人口が100名余増えた状態が今の屋久島 
いま必要なのは避難所生活している方々への医療の提供であり、医療機能も損壊された311震災とは違ったアプローチが必要

避難所生活は通常の住宅生活と違いプライバシーの確保も含めて、その病態や治療方針に影響を及ぼすことから特設外来の設置が必要と山本院長と意見が一致した。

明日、月曜日9時から『口永良部避難者特設外来』を設け、専任の看護師を付けた上で、円滑な受診体制を整えるとのこと

保健所から保健師を連日派遣する約束をする


屋久島町の保健師は今年の4月から一名減員となっているところへの今回の災害。町の保健師ニーズが増えることから保健所の支援が必要と判断

屋久島保健所には三名、西之表保健所には四名の保健師がいる。私は2つの保健所を兼務しているので、保健所長権限だけで連日派遣することが可能と判断し、町当局に申し入れたところ即答。後日、正式の依頼文を出すことになる。

屋久島保健所の保健師に相談し派遣計画を作成指示、最初の週の5日は屋久島保健所三名がローテートする、残りの2日は西之表保健所に依頼するとのこと

西之表保健所の統括保健師(昔の保健婦長)に相談したらウェルカム、来週の木金の2日の派遣を依頼した。最初は熊毛地域の統括保健師である自らが現地に入りたいとのこと
所属長権限だけで決定できる部下の出張命令であること、屋久島町への支援を急ぐのも当然のこと、屋久島町当局も受け入れ快諾 

結局、厚労省のチームは入らなかった


県の危機管理局から厚労省のDMATチームから現地に入りたいとの連絡があり受諾した。DMATチームは訓練されているので町側に迷惑をかけることはしないからの判断でありDMATチームもこれが経験となればとの思いからだった。

翌日、再度、連絡があり現地がいま必要なのはDMATではなくDPATと判断したので、DPAT派遣について直接現地担当者に接触させて欲しいと要請された。現地にいる保健所保健師の携帯の電話番号を教えた。

結果論から言うと、日赤のチームは翌土曜日に現地入りしニーズ把握し月曜日に帰るという迅速な対応をした。一方、厚労省のチームは日曜日に打診し月曜日にDPAT打診するも空振りだったようだ。
災害派遣はニーズ把握も含めた迅速な対応が現場では求められている

2015/05/30

2015/5/30(土) 待つ

保健師2名、獣医と薬剤師を現地に派遣


口永良部診療所の毒劇薬麻薬などの保管状況をヒアリングするために薬剤師を派遣、口永良部に残置された犬が何頭いるのか聞き取り調査に獣医、町保健師との連携支援の受け入れ可能性を探るために保健所保健師2名を派遣する。

町の保健師からは、少なくとも一週間は避難者の顔も知っているので頑張れるだけ頑張りたいとの思いが伝わる。
獣医は口永良部の残置犬が何頭いるのか避難者に対して聞き取り調査に入り、避難した犬のドッグフードなどを提供をした。

県保健福祉部からの動きは



昨日に続いて医療整備課長から口永良部診療所の先生の安否確認を求められた。バタバタしている町に問い合わせをし安否確認をした。

その後何故安否確認を求めたのかと確認したところ保健師の噂として体調不良と聞いたのでとのこと。体調不良は噴火当日開催予定の医療専門委員会の出席キャンセルの理由が体調不良だったのが噂として県に届いたのかと推察 
噴火から一日経過するも期待していた県保健福祉部上層部から保健所長に対しての連絡は無かった。保健所長の職分だけでできることをこの土日で最大限行う覚悟をした。

国の担当副大臣が現地視察に入ったのは噴火翌日の今日。県も支庁長が現地視察に入った。

2015/05/29

2015/5/29(金) 所長!口永良部が噴火しています!

5月29日、今日は兼務している屋久島保健所の勤務日だ

そして今日は屋久島町医療専門委員会の日


今夜の19時から屋久島町長を会長とした『屋久島町医療専門委員会』を開催することになっており、全医療機関が出席するため保健所そして町として大事な会議の日だった。

栗生診療所の三宅先生からの在宅医療に関する提言が話題の中心になるのかとあらかた決裁を済ませた10時頃、所長室であれこれ考えていた。

この委員会は屋久島町の介護衛生課、健康増進課、屋久島保健所そして屋久島町の全医療機関の医師が集まり、行政側からは今年度の新規事業を含めた施策の情報提供と説明そして医療機関からは専門的見地から意見を出していただく会議であり、事務局は保健所が担っていた。 
ああそうだ、事務局を屋久島町に移行させるのも懸案だったと考えていた瞬間

『所長!口永良部が噴火しています!』


何を大声で慌てているのかと、所員がいる執務室に行くとテレビの前に集まっていた。時間は10時10分頃

屋久島町商工会の会長が就任の挨拶に来ていた。彼も挨拶するのを忘れ映像に見入っていたが我に返り商工会事務局に去年入った元南日本新聞の記者とともに名刺交換をした。
安斎前会長と私との接点は屋久鹿の食肉処理工場の建設についてだった。

NHKの噴火映像で、避難者が集まっている番屋ケ峰、噴火に伴う被害者がいるのかどうかなど情報を把握していると、6年前の既視感におそわれた。

これも運命、6年前の新型インフルエンザが発生したとき私は厚労省の中部空港検疫支所長をしておりその陣頭指揮をしていた。
そのときの再現を予感したが、まさかそれ以上の事態を迎えるとはこのときは想像だにしていなかった。

医療専門委員会の中止決定


情報源はNHKのテレビだったが、それでも異例の報道体制で延々と19時頃まで口永良部の噴火のみでしかも生中継なので情報の入手に不足は無かった。

健康被害は体調不良と軽度の火傷、ヘリコプターによる屋久島徳洲会病院への移送、全島民はフェリー太陽で屋久島へ、などの報道でトリアジューを中心とした救護所の設置などで病院と医師会の調整は不要と判断した。

後日、確認したところフェリー太陽に町立診療所の医師二名が乗り込み避難者の健康確認(トリアージュ)をしてから降船をさせたとのこと
火傷軽傷の報道があり続報が無かったので入院などはしていないと思っていたが、後日、屋久島徳洲会病院長と面談したとき、咽頭内部までの熱傷はなく重度は2度と軽いものの入院中であるとのこと。 

10時半頃、部下から今日の医療専門委員会は町側の出席が困難と思われるので中止の連絡をしていいかと指示を仰がれた。

そういえば屋久島の医師全員が集まる会議にこの4月に着任したばかりの口永良部診療所の先生が体調不良のため2日ほど前に委員会欠席の連絡があった。
ちょっと呆れつつ、『中止の決定はいいが委員への連絡は午後からゆっくりとしろ』と指示をすると、『確かに待ってましたと誤解されるおそれもありますね』

部下まで軽いパニックになっている。私の判断もパニックにならないよう自重自重

保健師2名と獣医など2名の派遣


17時頃にフェリー太陽で宮之浦港に全島民が避難し、避難所3箇所に入るとのこと

飼養犬が置き去りされていないか把握すること、町の保健師との連携を打診することのために保健師2名、獣医等2名の部下を宮之浦港に派遣する。

屋久島に全頭避難しておらず犬を放している事例があったと報告を受け、動物愛護法関連の所管責任者として困惑する。

獣医は港で出迎えた後は避難所に出向き避難してきた犬に対してゲージ、サークルやペットフードの差し入れ支援をしてきたとのこと。

保健師を派遣をしたのは町保健師との今後の長い連携の初日なので港に出向いたことで私の目的は達成されていた。栄養士と町との連携ができなかったことは懸念だが、これからじっくり支援できる体制を作ればいいと考えていた。

健康危機管理の観点から24時間対応するよう指示


鹿児島県は対策本部を、熊毛支庁には現地対策本部を設けることになったが、保健所が属する屋久島事務所では噴火当日は保健所長が呼ばれるような会議は無かった。

しかも、明日からは土曜日、まる2日間今夜を入れると60時間、保健所を空にする勇気は私にはなかった。屋久島事務所に出向き保健所も健康危機管理上災害対応に準じる待機をすると通告し、24時間対応の連絡員待機を部下に指示した。

この判断は正しかった。県保健福祉部からは待機していることを当然のように土曜日日曜日に電話連絡してくる。厚労省からはDMATチームの派遣打診が日曜日に入る

当日保健所長に連絡してきたのは医療整備課長


噴火当日の13時頃に『避難者100名だから10名程度の対応ができるよう徳洲会病院に要請してほしい』と医療整備課長から依頼があった。

病院長に要請するまでもなくその程度の対応能力の余力はあるのは当然だが、病院長の携帯に電話をした。返事は想定どおりだった。

振り返るに、噴火した当日に県保健福祉部から保健所長に電話があったのは医療整備課長だけだった。 
厚労省に居た頃には政府対策本部が立ち上がるような緊急事案が発生すると間髪を入れず上層部から現場に激励とどのような応援が必要なのかの電話が入るものだが、危機管理局が統括しているためか、保健福祉部から個別の連絡は無かった。

『観光協会なら対応できるはずです』


電話の会話が耳に入った。一体なにを言っているのかと尋ねると、厚労省の社会福祉関連の担当者が屋久島に急に行くことになったとのことで、宿の確保を依頼してきた、それも一週間ほどとか数名とか曖昧な内容だったとのこと

確かに予約行為は個人の金銭を伴う契約行為なので言った言わないのトラブルに巻き込まれる。

宿の斡旋は観光協会のメインとも言える業務だから、気軽に電話で相談すればいい、旅館業の許認可権限を持っている保健所に斡旋をお願いするのは痛くない腹も探られる行為になる。