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2015/05/29

2015/5/29(金) 所長!口永良部が噴火しています!

5月29日、今日は兼務している屋久島保健所の勤務日だ

そして今日は屋久島町医療専門委員会の日


今夜の19時から屋久島町長を会長とした『屋久島町医療専門委員会』を開催することになっており、全医療機関が出席するため保健所そして町として大事な会議の日だった。

栗生診療所の三宅先生からの在宅医療に関する提言が話題の中心になるのかとあらかた決裁を済ませた10時頃、所長室であれこれ考えていた。

この委員会は屋久島町の介護衛生課、健康増進課、屋久島保健所そして屋久島町の全医療機関の医師が集まり、行政側からは今年度の新規事業を含めた施策の情報提供と説明そして医療機関からは専門的見地から意見を出していただく会議であり、事務局は保健所が担っていた。 
ああそうだ、事務局を屋久島町に移行させるのも懸案だったと考えていた瞬間

『所長!口永良部が噴火しています!』


何を大声で慌てているのかと、所員がいる執務室に行くとテレビの前に集まっていた。時間は10時10分頃

屋久島町商工会の会長が就任の挨拶に来ていた。彼も挨拶するのを忘れ映像に見入っていたが我に返り商工会事務局に去年入った元南日本新聞の記者とともに名刺交換をした。
安斎前会長と私との接点は屋久鹿の食肉処理工場の建設についてだった。

NHKの噴火映像で、避難者が集まっている番屋ケ峰、噴火に伴う被害者がいるのかどうかなど情報を把握していると、6年前の既視感におそわれた。

これも運命、6年前の新型インフルエンザが発生したとき私は厚労省の中部空港検疫支所長をしておりその陣頭指揮をしていた。
そのときの再現を予感したが、まさかそれ以上の事態を迎えるとはこのときは想像だにしていなかった。

医療専門委員会の中止決定


情報源はNHKのテレビだったが、それでも異例の報道体制で延々と19時頃まで口永良部の噴火のみでしかも生中継なので情報の入手に不足は無かった。

健康被害は体調不良と軽度の火傷、ヘリコプターによる屋久島徳洲会病院への移送、全島民はフェリー太陽で屋久島へ、などの報道でトリアジューを中心とした救護所の設置などで病院と医師会の調整は不要と判断した。

後日、確認したところフェリー太陽に町立診療所の医師二名が乗り込み避難者の健康確認(トリアージュ)をしてから降船をさせたとのこと
火傷軽傷の報道があり続報が無かったので入院などはしていないと思っていたが、後日、屋久島徳洲会病院長と面談したとき、咽頭内部までの熱傷はなく重度は2度と軽いものの入院中であるとのこと。 

10時半頃、部下から今日の医療専門委員会は町側の出席が困難と思われるので中止の連絡をしていいかと指示を仰がれた。

そういえば屋久島の医師全員が集まる会議にこの4月に着任したばかりの口永良部診療所の先生が体調不良のため2日ほど前に委員会欠席の連絡があった。
ちょっと呆れつつ、『中止の決定はいいが委員への連絡は午後からゆっくりとしろ』と指示をすると、『確かに待ってましたと誤解されるおそれもありますね』

部下まで軽いパニックになっている。私の判断もパニックにならないよう自重自重

保健師2名と獣医など2名の派遣


17時頃にフェリー太陽で宮之浦港に全島民が避難し、避難所3箇所に入るとのこと

飼養犬が置き去りされていないか把握すること、町の保健師との連携を打診することのために保健師2名、獣医等2名の部下を宮之浦港に派遣する。

屋久島に全頭避難しておらず犬を放している事例があったと報告を受け、動物愛護法関連の所管責任者として困惑する。

獣医は港で出迎えた後は避難所に出向き避難してきた犬に対してゲージ、サークルやペットフードの差し入れ支援をしてきたとのこと。

保健師を派遣をしたのは町保健師との今後の長い連携の初日なので港に出向いたことで私の目的は達成されていた。栄養士と町との連携ができなかったことは懸念だが、これからじっくり支援できる体制を作ればいいと考えていた。

健康危機管理の観点から24時間対応するよう指示


鹿児島県は対策本部を、熊毛支庁には現地対策本部を設けることになったが、保健所が属する屋久島事務所では噴火当日は保健所長が呼ばれるような会議は無かった。

しかも、明日からは土曜日、まる2日間今夜を入れると60時間、保健所を空にする勇気は私にはなかった。屋久島事務所に出向き保健所も健康危機管理上災害対応に準じる待機をすると通告し、24時間対応の連絡員待機を部下に指示した。

この判断は正しかった。県保健福祉部からは待機していることを当然のように土曜日日曜日に電話連絡してくる。厚労省からはDMATチームの派遣打診が日曜日に入る

当日保健所長に連絡してきたのは医療整備課長


噴火当日の13時頃に『避難者100名だから10名程度の対応ができるよう徳洲会病院に要請してほしい』と医療整備課長から依頼があった。

病院長に要請するまでもなくその程度の対応能力の余力はあるのは当然だが、病院長の携帯に電話をした。返事は想定どおりだった。

振り返るに、噴火した当日に県保健福祉部から保健所長に電話があったのは医療整備課長だけだった。 
厚労省に居た頃には政府対策本部が立ち上がるような緊急事案が発生すると間髪を入れず上層部から現場に激励とどのような応援が必要なのかの電話が入るものだが、危機管理局が統括しているためか、保健福祉部から個別の連絡は無かった。

『観光協会なら対応できるはずです』


電話の会話が耳に入った。一体なにを言っているのかと尋ねると、厚労省の社会福祉関連の担当者が屋久島に急に行くことになったとのことで、宿の確保を依頼してきた、それも一週間ほどとか数名とか曖昧な内容だったとのこと

確かに予約行為は個人の金銭を伴う契約行為なので言った言わないのトラブルに巻き込まれる。

宿の斡旋は観光協会のメインとも言える業務だから、気軽に電話で相談すればいい、旅館業の許認可権限を持っている保健所に斡旋をお願いするのは痛くない腹も探られる行為になる。

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