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2013/03/20

未来の健康を訴求するから健康づくりは定着しない

4年前、保健所長となって初めての職場検診の結果は、想定通り胃がん検診の精検、γGTPの精検、メタボ傾向と惨憺たるものだった。

検疫所にいた頃は感染症防御の立ち位置なので紺屋の白袴と公私のけじめととぼけられたが、こと保健所長の立場になると、メタボだったりアルコール性肝障害じゃ業務遂行上にも支障が生じる。

煙草はニコチン代替療法としてニコチンガムで受動喫煙対策は講じることができた。その後、ニコチン依存症の治療によりニコチンガムからも卒業できた。

断酒してもγGTPが下がらない


γGTPが278と三桁を軽く超えてしまっていることで思い当たるのは、赤ワインを毎晩一本軽く空けてしまう日々を数年続け、屋久島に来てからは三岳という焼酎を5日で一升空けてしまっていたので、ほぼ確信的にアルコール性肝障害によるものと考えた。

アルコールによるγGTP上昇なら禁酒数日で下がるし、ひと月ほど断酒すれば、確実に正常値化すると、軽く考えて、ノンアルコールビールでひと月断酒して、精密検査をしたところ、意に反してγGTPが下がっていない。

送別会とか飲み会など機会飲酒のみだったのが、40歳を過ぎてからは、家で晩酌の機会が増え、55歳を過ぎてからは、晩酌が毎日の日々だから数えて5年間のアルコール漬けじゃ、肝炎も慢性化しているだろうし、最悪、線維化とともに肝硬変にもなっているだろうと自己診断をし、達観することにした。

運悪くメタボ基準に引っかかってしまった


去年の4回目の職場検診当日、オレンジジュースを飲んで受診し随時血糖値が149となり、とうとうメタボ基準に引っかかってしまった。

体重も人生最大の89キログラム、仕事をして帰宅しても、座っているのが数時間続くと疲れてしまい横になるほどの半病人状態だったので、意を決して減量に挑戦することにした。

減量で最も効果的なのは絶食療法。朝はジュース、昼は麺類、夜はツマミと焼酎。ひと月で8キログラムほど減量し、体重も軽くなった。

82キログラム前後の頃、顔面にできたイボから出血するので手術で取ることになり、その時、手術前検査で血液一般を行ったが、血液データは改善されていなかった。

運良くマウンテンバイクを2万円で譲ってもらうことになった


5万円で買ったというマウンテンバイクを一年落ちで譲ってもらうことになった。本人の弁によると屋久島だからマウンテンバイクで山を楽しもうと思ったが、そのような場所が無かった、舗装されている道路を走るにはダンパーが邪魔だし、クロスバイクかロードバイクに買い換えるとのこと

買った以上は乗るしかない、60歳を過ぎてのサイクリング挑戦が半年前に始まった。

最初の休日に、その知人と屋久島一周にチャレンジしようとしたが、最初の安房の坂で頓挫、登り坂は押して恋泊で断念した。それからは毎朝のウォーキングコースをサイクリングで走り、昼休みは弁当持参で小瀬田まで、土日祭日は4時間前後のサイクリングの日々

安房から栗生までの片道35キロメートルを往復して、マウンテンバイクの重さに疲弊困憊。クロスバイクを購入して軽く栗生まで行けるのに驚き、そのまま西部林道に入り永田に着いたら後戻りの方が距離が長いので、そのまま屋久島一周することになった。

屋久島一周サイクリング大会に出場するためにマウンテンバイクのタイヤをスリックに代えて参加したり、ロードバイクが欲しくなり購入したりしてサイクリングを楽しんだ半年間だった。

ふと気がつくと、体重は77キログラムになり、登り坂も軽く登れるようになった。特に大きな変化は、半年前まではジョギングしても50メートルも走ると息が切れたのに、今では毎朝400メートルのトラックを5周するようにまでなった。本当に体力がついた。

職場検診の要精密検のため受診したら、その結果に院長が驚いた


年度末に近づき、担当者がおそるおそる精密検査を受診したか否かを尋ねにきたので、改善されていないだろうγGTPの対応もあり、気休めでもクスリを飲んでみようと思い病院受診することにした。

恐るべきことが起きた。

γGTPが限りなく二桁に近い109と半減以下になっていた。コレステロールも中性脂肪もGPTも正常値。院長もクスリなど不要、このまま運動を継続し、あと10キロ減量を目指すだけでいいとの判断

焼酎は5日で一升とペースは変わっていないので、この体質改善はサイクリングしか考えられない。絶食で体重を減らしても断酒してもγGTPが改善されていないのだから、如何に運動が効果的か実体験をした。

不思議なことに毎日酷使している肝臓もいたわろうと、5日で1本を一週間に焼酎1本にしようとカラダをいたわるようになった。

一日一万歩運動よりもスポーツの楽しさを教える学校教育の充実を


厚労省の言う一日一万歩を実践すべく、保健所長になってからの4年間挑戦し続けていたが、毎回2,3か月しか続かなかった。屋久島は世界遺産の島、景色は絶景で海も山もいい、ウォーキングに最適な地なのに、何故か続かかない。

サイクリングを日常に取り入れて半年間の経験から考えるに、運動負荷が自由自在にできること、膝関節への負担が無いこと、目標設定と達成感があること、それよりなにより運動負荷の大きい登り坂への報酬が次なる下り坂での開放感で得られ、この登り坂の到達点の峠で得られる達成感では脳内モルヒネが放出されているようだ。

この達成感を味わうようになると、同じ回路なのか、ジョギングも楽しめるようになり、とうとう毎朝2キロメートルが日課となった。400メートルトラックを5周し、クールダウンで200メートルを歩き、その後100メートル全力疾走、100メートルクールダウンでかなりの達成感を感じている。

ウォーキングでは毎日2時間程度を健康維持のために費やすことになるが、そのウォーキングそのものが楽しくないと、その時間が勿体無く感じるようになる。求める報酬が未来の健康だから継続できないと思われる。

大脳皮質で理解させる未来の健康よりも、海馬で味わう脳内モルヒネによる運動を訴求すべきだろう。

なお、これを実践するには、特に高齢者は心拍数管理が必要だ。胸ベルトでリアルタイムに心拍数を表示するものが販売されている。目標心拍数は計算式があるが、安全率を見込んでいるのか、かなり低い数値となる。一番的確なのは自分自身の体感で判断するのがいい。

私の場合では半年前は145、今は155じゃないと満足できなくなっている。あまり負荷をかけ過ぎると心肺停止となるので、お勧めはできない。計算式は次のとおり。

最大心拍数=220-年齢
目標心拍数=(最大心拍数-安静時心拍数)の80%負荷

60歳で安静時心拍数が60とすると、

最大心拍数=160
目標心拍数=140

高齢者の場合には、やはり低めに出るので運動負荷の現場では

最大心拍数=210-年齢/2

で運用しているところもある。これで計算すると、

最大心拍数=180
目標心拍数=154

すべての高齢者にこの計算式で運用するのは微妙に怖い

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